近所のコンビニでジョン・レノンに会った話
これは、小腹が空いた僕が軽食でも買おうかと、コンビニに行ったときの話です。
僕はコンビニに入ると、即行でサンドイッチが並べられている棚に向かいます。
そう、僕は三度の飯よりサンドイッチが好きなのです。サンドだけに。
ちなみにツナサンドが一番好き。
そんな僕の前から、こちらに向かって歩いてくる一人の男がいました。
ふつうの人ならばわかっているでしょうが、他人の顔はじろじろ見ないのがマナーというやつです。もちろん僕だってそれくらいのマナーはわきまえている。
つまり僕と彼は、顔を見合うこともなく、ごく普通にすれ違った。はずだった。
すれ違った直後、僕はぎょっとして後ろを振り返ってしまった。
彼の顔は、ジョン・レノンそっくりだった。
僕は無類の音楽好きです。もっぱら邦楽専門なので洋楽には疎いですが、ビートルズくらいは聞いたことがあります。
ピチピチの若造である僕とビートルズはなかなか結びつかないでしょうが、母親がビートルズのCDをよく聞いていました。その影響で僕も自然とビートルズを好きになったのです。
そして、そのビートルズのメンバーであるジョン・レノンのCDも、ビートルズに負けないくらい好きなのです。
さて、話を戻そう。ぎょっとして振り返った僕は、失礼ながら彼の後ろ姿をまじまじと眺めました。
そして彼が商品棚の角を曲がる瞬間、僕には彼の横顔をちらっとであるが見ることができました。
大きな丸眼鏡、くねりと曲がった長い髪、優しそうな目元に髯を蓄えた口元、太く平行な眉毛。
それはジョン・レノンに瓜二つであった...
それから僕は商品選びどころではなくなりました。
もう一度、今度はちらっなどではなく、彼の顔を間近でじっくりと見たくなったのです。
彼がいつ会計を済ませコンビニを出るかわからない。もしかすると何も買わずに出ていくかもしれない。
そしてそんなことを考えているときに限ってトイレに行きたくなる。どうしようか。何か別のことを考えて気を間際らせようか。そういえばあのジョン・レノンもう〇こをするのだろうか。もしそうだとしたら軽くショックだなぁ。
とそのとき。僕はジョン・レノン、いやジョン・レノンそっくりの彼が商品を持ってレジに向かうのを横目で見た。
急がねば。ここを逃すともう一生見ることができないかもしれない。
何も考えずに目についたサンドイッチを掴みとり、僕は彼のすぐ後ろにつきました。隣のレジの方が早そうだったのにも関わらず。我ながらかなりの阿呆です。
レジの店員はどんな反応をするのだろう。ちょっと楽しみにしていましたが、レジのお姉さんは何も気付かずに普通に対応をしました。
彼は缶コーヒー、おにぎり2つ、バイクかなにかの雑誌、それにレジでタバコを頼んでいた。もちろん他人の商品をじろじろと見ることもマナー違反です。皆さん気を付けてほしい。
ここで驚いたのが、タバコを買うときに聞いた彼の声、というかその言葉。
「ホープください」
日本語だった。そう、僕は彼のあまりにも美しい顔に見惚れ、てっきり彼を外国人だと勘違いしていたのです。
僕は動揺した。日本人と外国人がこんなにも似るものなのだろうか。後で冷静に考えてみると、日本語の超上手な外国人か、もしくはハーフだったのかもしれない。
そんな僕とは裏腹に冷静で的確かつスピーディな対応をしたレジのお姉さん。お姉さんの「ありがとうございました~」の声とともに彼は去っていった。
最後に間近で見た彼の横顔は、まさに日本人の素晴らしい対応に満足げな、ジョン・レノンそのものだった。
思わぬビッグスター(のそっくりさん)を目撃した僕も、満足気な表情でその場をあとにしました。
コンビニを出ると、コンビニ前でたむろしていた女子高生の会話が耳に入ってきた。
「今の人、平井ファラオに似てなかった?ww」
うん、まぁ、似てなくはないけども。