ドラムにおける「ヘタウマ」を考えてみる。
ボーカリストやギタリストは、ある程度の人数「ヘタウマ」と呼ばれる方々がいます。
スタジオミュージシャンには全然向いてないんだけど、バンドになると超かっこいい。いろんな音楽ができるわけじゃないけど、その人にしか出来ない音楽がある。そんな人達。
ジミー・ペイジとか、ジョージ・ハリスンとか。ペイジ先生なんかはもう伝説級です。
しかしドラマーはどうだ。
あれ?ヘタウマなドラマーって聞いたこと無くね?
というわけで、今日はヘタウマなドラマーを探してみようと思います。
ドラムテクニックにおける「上手い」とは何か?
まず、テンポキープ。これが基本中の基本です。
スタジオミュージシャンには必須ですね。これが無いとマトモに演奏できない。マジで。
そして、引き出しの多さ。
いろんな曲がある中で似たようなフィルインばっかりだと、ちょっと素人っぽく聞こえてしまいます。
数々のジャンルをこなす中で、膨大なフレーズを身につけているのが、上手なドラマーと言われる人たちです。
グルーヴはテクニックとは別の話になってくるので外しました。
「ヘタウマ」=「テクニック的には下手だけどいいグルーヴがある人」ということですね。
ヘタウマドラマーを探す
①THE BLUE HEARTS「梶原徹也」
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ブルーハーツのドラマー、梶くん。
日本のロックに旋風を巻き起こした彼らの演奏。
テンポキープは出来ない、これといって目立ったフィルインも無い、でもめちゃくちゃ熱い。
何よりスネアの「パァンッ!」って音がかっこよく聞こえる。なんだろうな、この心地よさは。
次にドラムソロ。バスドラもずっと四分刻みだし、これといってテクニカルなことは何もやってない。
正直フレーズを真似するだけなら僕でも出来ます。
でもやっぱりプロは、「音」が違う。
「パァーンッ」って鳴らすとこと「ダララララ」って流すとこのメリハリが綺麗にできてますね。
この音が多くの人を惹きつけるのでしょう。やっぱり梶くんは凄かった。
②NUMBER GIRL「アヒト・イナザワ」
モタるし走る。でもバンド全体はちゃんとついてきてるし、いい意味で暴れてるドラム。
アヒトイナザワのドラミングの特徴としてよく挙げられるのが「手数多め、拍長めのフィルイン」なのですが、いかんせん似たようなフィルばっかりなんですよね。
実はちょっとずつ違ってたりするんだけど、直線的なフィルばかりだから、全部同じ雰囲気、同じ印象になっちゃう。
だがそれがいい。ストレートで攻撃的なフィルが、ナンバーガールの鋭さを創り上げています。
変なPVに変な曲。アヒト・イナザワの変人っぷりが窺えます。
ボーカルの向井秀徳もなかなかの変態だ。
こんなのも見つけちゃいました。やっぱり僕は下手糞なアヒトが好きです。
③ザ・ビートルズ「リンゴ・スター」
伝説。言わずと知れたビートルズのドラマーです。
笑っちゃうくらい地味なフレーズです。
しかも他のロックバンドみたいに、「スタタタンッ!」って力強く叩くわけでもなく。あくまで軽く「テテトッ」って、なでるように優しく。恐る恐る叩いているようにすら見えます。
しかしリンゴスターは、いまだに多くのドラマーに支持され続けています。
その理由がこのグルーヴ。ビートルズを下から支える、素朴で自然なサウンドとグルーヴが素晴らしすぎるのです。
ついでに言うと、リンゴスターって実は左利き。利き手でスネア、利き手じゃない方でハイハットを叩います。
リンゴのグルーヴの秘密はここにあるのかもしれない。
下手でもかっこよく聞こえる理由
やっぱり、そのバンドに合った雰囲気が出せているからでしょう。
どのドラマーも、バンドのサウンドにしっかりとハマっている。稚拙でも一生懸命だったり、鋭く厳しかったり、逆に丸く優しかったり。
その証拠に、彼らが全然方向性の違うバンドで叩こうと思っても、ただの下手糞になるでしょう。アヒト・イナザワがくるりのサポートとして参加したときは、くるりのボーカリスト岸田に激怒されました。
元NUMBER GIRLの向井秀徳が結成した「ZAZEN BOYS」というバンドでも、アヒトのサウンドは求められず、けっきょく脱退という始末。ちょっと可哀想にもなります。
ただしヘタウマを目指して練習しない奴、おまえは下手糞だ!!
気を付けなければいけないのは、「俺はヘタウマだから~」とか言って全く練習しない人。
それはヘタウマではなくただの下手糞。
基礎練習もしない、仲間とのセッションもしない、それでは音楽活動をしているとすら言えません。
それに、楽器で食っていくなら、テクニックは必須です。
あなたのやっているバンドがビートルズみたく大ヒット...ってのは今の時代、難しいでしょう。というかいつの時代でも難しいことだ。
テクニックを極めること。アマチュアドラマーの第一歩はそこなのではないでしょうか。
おしまい。